
最終更新日:2021年1月26日
3Dプリンターには、個人用の安価な機種と、産業・工業用のハイエンド機種があります。
個人向けの情報は得やすいものの、法人向けの業務用3Dプリンターになるとわかりやすい解説が不足していると考えています。
メーカー公式情報を見ても一般ユーザにはわかりにくい
メーカー公式情報では「ここが進化した」「従来と比べてここが凄い」という差分情報が中心で、そもそもベースとなる基準知識を持たないお客様にとって理解できるものになっていません。
さらに専門用語や表記に関してもメーカー各社で異なることから、比較検討もままならないでしょう。
このページでは、そんな選定が難しい業務用3Dプリンターの世界で、御社に合った3Dプリンターをどのようにして選べば良いのか、その切り口(軸)と、3Dプリンター界の情勢を加味して最新情報をお伝えできればと思います。
3Dプリンターを選ぶ基準(軸)について
用途(やりたいこと)、造形方式、造形サイズ、使える素材という4つの軸を意識すると良いでしょう。
基準となる製品を仮決めしてみましょう。
「比較における基準となる製品」を決めると、3Dプリンターは圧倒的に選びやすくなります。
まずは想定で構いませんので「基準となる製品」を仮決めしてみてください。
それを基準に相対的に比較検討していくと良いでしょう。
基準としてわかりやすいのは、業界シェアNo.1メーカーであるStratasys(ストラタシス)社の製品です。ここを基準にすると、大失敗を防げると思いますので、参考となる製品をピックアップしておきました。
やりたいこと(用途)から選ぶ
業務用3Dプリンターは、それぞれ使われる目的・用途を想定して開発されています。
まずは用途にマッチする機種を厳選してピックアップしました。
製造業で試作・治具・工具に使いたい
一言に「試作」と言っても、業界や生産品、使う方のミッションなどにより様々な意味を持ちます。
試作における製品のコンセプトデザイン~最終デザイン検証、性能検証・機構設計の検証に用いたい場合など。
ある程度の強度が必要で、使用する部位・用途によって、耐熱性などが求められる場合もあるでしょう。
造形物の強度・耐久性を求めるなら、世界シェアNo.1のStratasys社のFDM方式の機種がお勧め
予算を抑えながらも工業用品質の3Dプリンターを入手可能
おすすめ機種:Stratasys F120(メーカー:Stratasys)
選定ポイント
- 工業用として使う上で、高精度・高速・高安定性は外せない
- 使える材料の種類は少なくて良い
- 良いものが欲しいが、予算は200万円未満
この機種は現行のStratasysの3Dプリンターの中でも最も安価なエントリーモデルという位置付けですが、最大のポイントは、同シリーズの上位モデルと比較して精度・速度・安定性等は変わらないということです。ワンランク上位モデルとの違いは、使える材料の種類に制限があるということだけ。
本来もっと高価格として位置付けて良いスペックの製品ですが、Stratasys社が戦略的に価格設定している影響で、お求めやすい価格で手に入ります。どの程度活用できるかわからない中での試験導入・最初の1台として選ぶにはお勧めの機種です。
豊富な材料を使えて造形サイズも大きい3Dプリンター
おすすめ機種:Fortus380mc(メーカー:Stratasys)
選定ポイント
- 多様なシーンで対応可能なStratasysの上位シリーズ製品
- スーパーエンプラの利用も可能。物性にこだわる試作用途に
表面の滑らかさ、高精細を求めるならStratasys社のPolyJet方式の機種がお勧め
導入費用を抑えつつ、広く活用できる機種が欲しいなら
おすすめ機種:Objet30Prime(メーカー:Stratasys)
選定ポイント
- PolyJet方式の3Dプリンターは細かなパーツの咬合確認等にも最適
- クリア材料やゴムライク樹脂の使用も可能だから、試作の表現力の幅が拡がる
造形スピードを出したい、材料費を抑えたい、複数材料を同時に使いたい
おすすめ機種:Objet260 Connex1(メーカー:Stratasys)
選定ポイント
- 特性の異なる3種類の材料を同時に使用可能なPolyJetミドルモデルでありながらリーズナブル
- 『Objet30シリーズ』と比較して、造形速度が約2倍、材料費は約60%
プロダクトデザイン(試作)のリアルなコンセプト確認に使いたい
製品開発の初期段階、コンセプト確認フェーズで、完成度の高い造形物を手に取ることができれば検討はスムーズに進むことでしょう。
機種によっては、形状の再現に留まらず、カラー、質感、透明度の再現までを行える機種が出ています。
リアルな造形物をつくりたいなら、StratasysのPolyJet方式の機種をお勧めします。
フルカラーかつ、コンパクトな筐体で高精細な造形が可能な注目の最新機種
おすすめ機種:Stratasys J55(メーカー:Stratasys)
選定ポイント
- フルカラー対応
- クリア樹脂に加えテクスチャーによるリアル表現が可能
形状確認のためのコンセプトデザインの造形から、最終製品イメージを高精度に再現するシーンまで、プロダクトデザインの全工程を大幅に加速・変革します。透明度の高いクリア樹脂と低価格材料にも対応。
フルカラーかつ、質感の再現まで求めたい
おすすめ機種:Stratasys J826(メーカー:Stratasys)
選定ポイント
- フルカラー対応
- ゴムライク樹脂、クリア樹脂に加えテクスチャーによるリアル表現が可能
最終製品の製造(DDM)に使いたい
まずは最終製品として使えるレベルの品質を担保できるか
3Dプリンターを最終製品の部品製造に用いることを考えた場合、最初に考えるべき検討軸は「最終製品として適した強度・耐久性を持つパーツが製造できるか」ということです。
前提として「精度が高い」「歪み・変形が少ない」「安定性が高い」機種である必要があります。
また、ある程度の3Dプリンターを用いたものづくりとしてのノウハウが必要になるため、色々と試行錯誤できるよう、1台でできることの選択肢が広い機種が良いでしょう。
例えば「多くの種類の材料(マテリアル)が使用可能」な機種は、できることの選択肢が広いと言えます。
製造個数・利用頻度はどれくらいか
また、どの程度の数量を製造したいか、というのも重要な要件です。
3Dプリンターは、1回の造形に数時間ほど掛かるため、数が多いのであれば生産ラインとして複数台必要になることも考えられます。それは安い投資ではないでしょう。
しかし、3Dプリンターを用いた製造の効率化として、工夫できるところもあります。
例えば、1回の造形につき3Dプリンター内の面積が許す限り複数個の造形を行うことで効率化も可能です。
それを考えると、造形トレイのサイズに余裕のある機種は価値があると言えます。
造形トレイのサイズは当サイト上では「造形サイズ」として表記されていますので、参考にしてみてください。また、スペック上は造形スピードにも注目してみてください。
耐久性、耐熱性、耐候性材料を使いたい
おすすめ機種:Stratasys F370(メーカー:Stratasys)
選定ポイント
- 装置の価格を抑えたい
- 幅広い物性の材料を使用したい
- 熱可塑性エラストマー(柔軟性のある材料)が使用可能
価格を抑えながらも、最終製品で用いられる多様な材料が使用可能な機種です。
Stratasysの上位モデル。余裕のある造形サイズで幅広い材料を使用可能
おすすめ機種:Fortus450mc(メーカー:Stratasys)
選定ポイント
- 高機能なエンジニアリングプラスチックまで利用可能
- 高精度
- 高度な造形データ編集ソフトに対応し「強度」「造形速度」「軽量化」を自在にコントロール可能
- 広い造形トレイ
厳しい試験にも耐えられるレベルの造形物を出力できる実績ある機種です。
金属の部品を製造できる、圧倒的に扱いやすい金属3Dプリンター
おすすめ機種:Studio System+™(メーカー:Desktop Metal)
選定ポイント
- ステンレス、高強度ステンレス、銅、インコネル等の金属で造形
- 焼結工程により強度の高い金属パーツを造形可能
特殊な素材を使いたい
3Dプリンターで用いられる材料には、PLAやABSなどの熱可塑性樹脂や、紫外線硬化樹脂、そしてステンレス等の金属があります。
さらに、産業界の要請に応える特殊な機能性材料についても対応が進んでいます。
生体適合性樹脂・耐薬品性樹脂
ガンマ線滅菌やエチレンオキサイド滅菌可能な生体適合性ABSや生体適合性ポリカーボネイト、生体適合性PEI(ポリエーテルイミド)などの材料を用いて造形したい場合、その材料に対応した機種を選ぶ必要があります。
価格を抑えながらも歯科分野で用いられる生体適合性樹脂が使用可能
おすすめ機種:Objet 30 Prime(メーカー:Stratasys)
選定ポイント
- 生体適合性樹脂MED610が使用可能で、医療及び歯列矯正歯科用モデルの製作を効率化
Stratasysの上位モデル。余裕のある造形サイズで幅広い材料を使用可能
おすすめ機種:Fortus450mc(メーカー:Stratasys)
選定ポイント
- 高精度
- 高速
- 広い造形トレイ
- 生体適合性樹脂・耐薬品性樹脂が使用可能
金属
一般の3Dプリンターはプラスチックを対象にしています。
金属材料で造形したい場合は、金属専用の3Dプリンターが必要です。
近年まで金属3Dプリンターは、パウダーベッド方式という金属粉末を用いる方式が主流でした。高価格で大掛かりな設備となり扱いにくいものでしたが、それを払拭するBMD方式の3Dプリンターが登場したことで、急速に普及しています。
今から金属3Dプリンターを導入するのであれば、今注目の造形方式について検討した方が良いと思います。
金属の部品を製造できる、圧倒的に扱いやすい金属3Dプリンター
おすすめ機種:Studio System+™(メーカー:Desktop Metal)
選定ポイント
- ステンレス、高強度ステンレス、銅、インコネル等の金属で造形
- 焼結工程により強度の高い金属パーツを造形可能
Desktop Metal社はGoogleやFordからも出資を受けている金属3Dプリンターのユニコーン企業です。
カーボン
3Dプリンターで造形する際に、とにかく強度の高い造形物を作りたいとなった場合、金属以外に「カーボン」という選択肢があります。
ナイロンにカーボンの長繊維を混合した素材を用いることができる3Dプリンターでは、他の樹脂に比べ非常に高強度の造形物を出力可能です。
Stratasysの上位モデル。カーボンによる高強度造形が可能。
おすすめ機種:Fortus 380CF(メーカー:Stratasys)
選定ポイント
- カーボンファイバー材料とASA材料の2種類が使用可能
- 高速、高精度
- プロトタイプから最終製品まで
- ハイエンドモデルだが、コストパフォーマンスが非常に高い
ローエンド製品でカーボンファイバーが使用可能
おすすめ機種:METHOD X CARBON FIBER EDITION(メーカー:MakerBot)
選定ポイント
- ナイロンベースのカーボンファイバー材料を含む12種類の材料が使用可能
- 親会社Stratasys社の技術協力により、熱に対する歪みを軽減するヒートチャンバーを搭載
- 個人向けと工業向けの中間機種なため比較的安価
巨大な造形物を作りたい
3Dプリンターでできる造形物の一般的なサイズは20~30cm四方程度です。
しかし、大型の造形物を出力したい場合、大サイズ専用の3Dプリンターが存在しますので、それを選びましょう。
特大サイズの造形物を高速造形するなら
おすすめ機種:Massivit 1800Pro(メーカー:Massivit)
選定ポイント
- 造形サイズ1170×1450×1800㎜
- 直径1mのシリンダー形状を造形するときは、1時間あたり高さ35cmの高速造形
超大型造形専用3Dプリンター専用メーカーMassivitの3Dプリンターは、精度は高くないものの巨大な造形物を高速造形可能です。研磨や塗装などの後加工を行う前提で大型モデルを短時間で手にしたいなら最適です。
大サイズのパーツを高精度に造形するなら
おすすめ機種:Stratasys F900(メーカー:Stratasys)
選定ポイント
- 高精度なストラタシスFDM方式のフラッグシップモデル
- 高機能材料での大型試作、治工具、小ロット生産まで対応可能
- 造形サイズ914×610×914mm
- 豊富な材料を使用可能
価格は抑えつつ、工業用でも使える品質を求めたい
個人向けの安価な3Dプリンターでは不安だが、工業用の3Dプリンターを導入するには予算が足りない場合、個人向けと工業用の中間に位置付けられる機種を導入してみるというのも一つの方法です。
造形サイズで選ぶ
3Dプリンターは、機種ごとに造形できる最大サイズが異なります。
大抵の場合、縦・横・高さの立方体として表現されます。
目的に適合する基準製品を仮決めしたら、その製品と同等のスペック・機能を持つ製品のうち、造形サイズが異なる製品も検討してみると良いです。
使える材料で選ぶ
3Dプリンターは機種により使える材料が異なります。
業務用3Dプリンターでは、その精度を維持し高い表現性を発揮するために、メーカーが開発したメーカー公式材料を用いることが一般的です。(個人向けでは安価なサードパーティー製の汎用材料もあります)
メーカー各社が自社の3Dプリンターに最適な材料を開発しています。
材料の差異は物性だけではありません
業務用の3Dプリンターでは、材料が収められているカートリッジにもかなりの工夫がされています。
例えばローエンドの3Dプリンターではリールで巻かれたフィラメントが露出しており、吸湿により劣化してしまうことがあるため保管に気を遣いますが、ハイエンド機種では対策がされています。
また、複数材料を扱える3Dプリンターを複数のチームが共用するシーンでは、カートリッジの入れ替えと保管がかなり手間になることがあります。カートリッジ数が多い機種では、いくつもの材料をセットしておけることで、入れ替えが不要になるなどのメリットがあります。
カタログスペックでは気付きにくいチェックポイント
例えば下記のような事柄はカタログスペックだけ見ていてもわかりにくく、実際に導入された後に気付くものもあります。
チェックポイント
- 造形の安定性
- 造形スピード
- 中空構造にできるか
- 粉塵の暴露等がないか
- サポート材は取りやすいか
- 造形物の強度はどうか?(Y方向の強度とX方向の強度)
- ソフトウェアは使いやすいか、エラーが出ないか
- メンテナンス・サポート体制は安心か
- マテリアル(材料)の品質や保管は
- 造形に歪みは無いか
また、造形サンプルを取り寄せて見る際には、下記に注意してください。
- サンプルは後加工したものではないか?
カタログスペックではわからない点も多いため、造形サンプルを取り寄せることをお勧めしています。
しかし、サンプルは予め用意されたその機種が得意とする形状の造形サンプルであったり、研磨などの後加工されたものが送付されているケースがあります。
期待値とのズレを無くし納得いく選定をするためにも、サンプル取り寄せの際には、自社で用意した実際に作りたいと思うものに近い3D CADデータをご用意いただき、後加工無しであることを確認されることをお勧めいたします。
当社では期待値とのズレを防ぐため、造形サンプルは後加工無しのそのままの状態でお渡ししています。
カタログスペックでは気付きにくいチェックポイント
3Dプリンターの選定において、基準となるリアルな情報を仕入れることは有用です。
弊社ではWeb上に積極的に情報掲載していますが、お伝えしきれないものもございます。
弊社は各分野の業界トップメーカーの製品を取り揃えており、メーカーの日本公式代理店(一次店)であり、産業機械の専門商社として日本市場においてお客様のニーズに応え続けています。
専門知識を持ったスタッフが、オンライン会議にも対応させていただきますので、お気軽にご相談ください。
また、無料のオンラインセミナーも行っています。
最新のオンラインセミナー予定
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