コラム

高強度の3Dプリンター材料

2026年04月06日

近年の3Dプリンターの活用は試作にとどまらず、機構検証や実用部品の製作などへと広がっています。
それに伴い、造形物に対してもより高い強度が求められるようになっています。
ここでは、こうしたニーズに応える高強度の3Dプリンター材料についてご紹介します。

「高強度の3Dプリンター材料」が求められている理由

近年、3Dプリンターは単なる試作ツールから、製品開発や製造プロセスの中で実用的に活用されるツールへと進化しています。
従来は外観やサイズ感を確認するための試作やモデルの造形が中心でしたが、現在ではその用途はさらに広がっています。
具体的には、設計の検証を行う機能試作や治具・工具の造形、さらには最終製品の造形など、「実際に使う」ための用途が増えています。
これらの用途では、見た目の再現だけでなく、荷重や繰り返し動作に耐えられる強度や耐久性が不可欠です。

また、開発スピードの向上という観点でも、高強度材料の重要性は高まっています。
3Dプリンターで製作した高強度な造形物を活用することで、試作段階からより実用に近い検証が行えます。
その結果、試作回数の削減や手戻りの低減につながり、開発効率の向上にも寄与します。

高強度な造形物ならできること

高強度な3Dプリンター材料を活用することで、これまで難しかった用途にも対応できるようになります。
具体的には、次のようなことが可能です。

  • スナップフィットや爪の嵌合を検証する。
  • 繰り返し使える剛性のある治具を作る。
  • 力を加えても壊れにくい位置決め治具を作る。
  • 耐久性や耐熱性など実際の使用環境を想定した試験を行う。
  • 部品の組み立て検証を行う。
  • 最終製品・実部品として使える造形物を製造する。

また、高い強度に加えて、設計通りの形状やディテールをどこまで再現できるかという点も重要なテーマとなっています。
だからこそ、「デザインの再現性」と、実用に耐える「強度」の両立が求められています。

カーボン繊維だけじゃない、高強度な3Dプリンター材料

高強度な3Dプリンター材料には、さまざまな選択肢があります。
ここでは、一般的なものから近年注目の材料まで、強度や耐久性に優れた3Dプリンター材料をご紹介します。

高強度なカーボンファイバー配合材料

高強度な3Dプリンター材料の代名詞とも言えるのが、カーボンファイバーを配合した材料です。
樹脂に炭素繊維を混合した材料で、軽量でありながら、通常の樹脂材料に比べて強度と剛性が大きく向上しています。

代表的な材料のひとつが、StratasysのNylon-CF10です。
ナイロンにカーボンファイバーを配合した材料で、高い強度・剛性に加えて耐薬品性や耐摩耗性も備えています。
機能試作から治具など幅広く活用でき、特にワーク保持治具のような負荷がかかる用途に適しています。

同じカーボンファイバー配合材料としてABS-CF10もあります。
ABSをベースにしているため扱いやすく、治具や固定具の造形に適した材料です。

用途や求める性能に応じて使い分けることで、最適な造形物を作ることが可能です。

Nylon-CF10
ABS-CF10

耐熱性にも優れるスーパーエンプラ材料

スーパーエンプラ材料は、耐熱性・耐薬品性・難燃性などに優れた高機能材料で、過酷な環境下での使用を想定した用途に適しています。
一般的な樹脂材料では対応が難しい条件でも使用できるため、3Dプリンターの活用領域を大きく広げています。

代表的な材料として、StratasysのULTEM 9085があります。
高い耐熱性と強度を備え、航空機内装部品や輸送機器関連部品など、厳しい環境条件が求められる分野で活用されています。
3Dプリンターで造形することで、軽量化と強度を両立できるため、構造部品の試作や最終用途部品として利用されています。
また、ULTEM 1010もあり、より高い耐熱性や強度に加えて生体適合性を有しています。

ULTEM 9085

さらに、より高い耐薬品性や耐環境性が求められる用途では、Antero 800NAが適しています。
PEKKベースの材料で、化学薬品や高温環境下でも性能を維持できるため、航空宇宙や防衛分野、半導体製造装置関連など、過酷な環境で使用される部品で活用されています。
軽量かつ高性能な部品を実現できる点が特長です。

また、Antero 840CN03は同様に高い耐薬品性を持ちながら、静電気対策(ESD特性)に優れており、電子部品や精密機器周辺での用途にも適しています。

Antero 800NA

強度と靱性に優れるナイロン材料

ナイロン材料は、強度と靭性のバランスに優れた、3Dプリンターで広く利用されている材料の一つです。
衝撃に強く、繰り返しの曲げや負荷にも耐えられるため、機能試作や実用部品の製作に適しています。

代表的な材料として、StratasysのFDM-Nylon 12があります。
高い耐衝撃性と耐久性を持ち、スナップフィットやヒンジなどの可動部を含む機構試作に適しています。
繰り返しの開閉や組立検証にも耐えられるため、設計段階で実機に近い評価が可能になります。

また、摩耗に強い特性を活かし、組立治具やハンドリング用のツールなど、現場で繰り返し使用する部品の製作にも活用されています。
適度なしなやかさを持つため、割れにくく、長期間の使用にも適しています。

FDM-Nylon 12

高精細かつ高強度を求めるならToughONE

これまで紹介してきた高強度材料は、いずれもFDM方式で使用される材料です。
FDMは高い強度や耐久性を実現できる一方で、積層による表面の粗さや微細形状の再現性に制約が生じる場合もあります。

こうした中で注目されているのが、PolyJet方式で高強度を実現する材料です。
PolyJetはインクジェットのように材料を吐出して造形する方式で、滑らかな表面や微細なディテールを高精度に再現できる点が特長です。
StratasysのToughONEは、PolyJetの高精細な造形性能を維持しながら、実用に耐えうる強度を備えています。
これにより、これまで難しかった「精細さ」と「強度」の両立が可能になります。

例えば、スナップフィットや爪構造などの機構部品においても、形状を正確に再現しながら実際の組立検証が行えます。
意匠と機能を兼ねた試作など、より実製品に近い状態での評価が可能になります。
さらに、寸法精度の高さを活かして、嵌合確認や精密なフィッティングが求められる部品にも適しており、設計検証の精度向上にも寄与します。
外観と機構の両方を一度に検証できるため、試作回数の削減や開発スピードの向上にもつながります。

ToughONE

高強度材料選びで重要なポイント

高強度な3Dプリンター材料を選定する際には、単に「強度が高いかどうか」だけでなく、用途に応じた性能のバランスを考えることが重要です。
特に近年は、機構試作や組立検証、意匠と機能を兼ねた試作など、より実製品に近い状態での評価が求められるケースが増えており、材料に求められる要件も高度化しています。

こうした背景から、PolyJet方式で使用できる高強度材料「ToughONE」は、精密な形状再現と機構検証を同時に実現できる新たな選択肢として注目されています。
意匠性と機能性の両方を求める開発現場において、有効な選択肢のひとつです。

さらに特筆すべき点として、高機能でありながらコスト面でも優れており、従来のPolyJet用スタンダード材料を下回る価格帯を実現しています。
高精細・高強度・低コストというバランスを備えた材料として、導入のハードルを下げつつ、新たな活用を後押しする存在です。

高精細と高強度を両立するToughONEの詳細を見る

まとめ

3Dプリンターの活用が広がる中で、造形物に求められる役割は「形状の確認」から「機能の検証」へと変化しています。それに伴い、強度や耐久性を備えた材料の重要性も高まっています。

カーボンファイバー配合材料やスーパーエンプラ材料、ナイロン材料など、それぞれの特長を持つ高強度材料が存在する中で、近年は精度と強度を両立できる材料にも注目が集まっています。
用途や求める性能に応じて適切な材料を選定することが、より精度の高い検証や開発効率の向上につながります。

3Dプリンターの高強度材料の選定や活用についてご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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この記事の監修者

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アルテック株式会社 デジタルプリンタ営業部 3Dプリンタ営業課 渡邊 誠也
学生時代に3Dプリンターと出会う。以来、3Dプリンターに関わる仕事を求めアルテックに入社。さらに3Dプリンターの沼に入り込み、個人でもMakerbot社の3Dプリンターを所有。その知識量から、部内では3Dプリンターマイスターと呼ばれている。 さらに最近は愛犬家としても社内で知られている。
日々お客様からいただく生の声を糧に、「今、本当に求められている情報」をWebサイトやWebセミナーで精力的に発信している。

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