
モーションコントロール分野の世界的リーダーであるパーカーハネフィン社。そのエアロスペースグループが製造する航空機制御部品は、世界中の多くの航空機に採用されています。ユタ州オグデンにあるCommercial Flight Controls部門で、デイブ・ハウ率いる3Dプリンターチームは、3Dプリンティングを特別な技術から“当たり前”の業務プロセスへと進化させました。
アイデアを現実に
最初のきっかけは、工具製造の課題を3Dプリンターで解決できるのではないかという、小さなアイデア。3Dプリンターの製品開発を手掛けるPADT社の協力で、貸し出し用の3Dプリンターを用いた試験運用からスタートしました。保護用キャップなどの製作を通じて、3Dプリンティングの有用性はすぐに社内へと広まりました。その後、3Dプリンター購入の是非を「コスト削減効果」で証明し、短期間での初期投資回収を実現しました。
3Dプリンター活用の拡大
3Dプリンターは一度導入すれば、その用途はエンジニアの発想とともに広がっていきます。設計モデル、プロトタイプ、治具、マスキングテンプレート、さらには廃番となった部品の再生産まで、多様な活用が進んでいます。特に航空機部品の可動部やリンク機構の保護パーツは、手直しや不良による廃棄、納期遅延の防止に大きく貢献しています。


また、3Dプリント技術は、部品の損傷リスク低減や内製による調達期間の短縮、作業環境向上など、単純な金額換算を超えたさまざまな「見えない価値」も生み出します。

さらに、3Dプリンターの導入によって、過去には数日かかっていた顧客向け専用ゲージの製作を、一晩で3Dプリントし翌日には納品するスピード感も実現しました。
組織変革の推進
新しい技術導入には、従来のやり方を変える必要があり、社内の意識改革も必要です。ハウ氏とズンボ氏は、3Dプリンターの技術とその可能性を社内で丁寧に説明し、多くのメンバーに3Dプリンティングへの理解と共感を広げてきました。今では、従来は不可能だったものの製作依頼も多く寄せられるようになっています。


利益向上への貢献
こうした取り組みは、パーカーハネフィン Commercial Flight Control部門の中で大きな効果を生み出しています。現在はStratasys製Fortus 400mcとFortus 450mcの2台の3Dプリンターを運用、プリント成功率は99.9%を誇ります
3Dプリンターの導入によって、イノベーションやグループ間のコラボレーションが促進され、新しいアイデアの具現化が圧倒的なスピードで進むようになりました。部品の内製化による廃棄削減、品質向上、調達リードタイムの短縮も実現しています。
「3Dプリンターは私たちに廃棄の削減、品質向上、リードタイム短縮、利益拡大をもたらしました」。こう語るチーフエンジニアのブライアン・スイスは、3Dプリンターがビジネスプロセスを継続的に進化させ、今や欠かせない存在であることを強調しています。
この事例で登場した製品
Fortus450mc
次世代プロダクション3Dプリンター