3Dプリンター導入事例 (株式会社SHOEI 様)

3Dプリンターで微細なヘルメットの試作パーツを作っています。

豊富なマテリアル、短い造形時間、造形品質、容易なサポート除去など、色々なメリットがあります。 株式会社SHOEIは、世界トップシェアのオートバイ用ヘルメットメーカー。
今、世界的に注目されている"Stratasys J35Pro"を活用して、機械試作やデザイン検証を行う。
全てのバイカーに対して「より快適な装着感」を提供できるよう、見えない技術や試行錯誤がヘルメットには詰まっている。3Dプリンターの導入・活用をしている菊池様へお話を伺った。

お客様情報

社  名 : 株式会社SHOEI

所在地 : 〒300-0525 茨城県稲敷市羽賀1793-1

創  業 : 1959年

事 業 内 容 : 一般向け、官公庁用(防衛省/警察庁)オートバイ用ヘルメットの製造・販売

Webサイト : http://www.shoei.com/

3Dプリンターは6年前から活用

貴社の事業について教えてください。

菊池氏:当社はオートバイ用ヘルメットの製造販売において、世界でトップシェアを有する企業です。世界60カ国に販売網があり、欧州・北米・その他の地域でもSHOEIブランドはプレミアムヘルメットの代名詞として知られています。また海外の警察用ヘルメットなどをはじめ官業ヘルメットの製造でも多くの機関に採用されております。

茨城工場ではどのような業務を行っていますか?

菊池氏:茨城工場ではヘルメットの機構や内装など内側の設計を担当する設計開発部と、デザインを担当する造形部がございます。この2つの部署は同じ部屋で業務をしているため、機能性とデザイン性の両立ができるように、横のつながりが強いです。3Dプリンターも共用で使用しています。

ヘルメットの試作から市場流通までのリードタイムはどれくらい?

菊池氏:ヘルメットの試作から市場流通までは3年以上掛かっていました。しかし、これまで外注をしていた仕事を内製化することでリードタイムを1年以上短くすることが出来ました。例えば、3Dプリンターの導入による試作の内製化や金型設計の内製化です。

菊池 隆弘 氏

3Dプリンターはいつから使われていますか?

菊池氏:6年ほど前から使用しています。最初はストラタシス以外のインクジェット方式の3Dプリンターを使用していました。

当時はどのように使われていましたか?

菊池氏:形状確認や耐熱材料を使用した金型の試作などに使っていましたので使用頻度は高かったです。しかし老朽化も進んだことで数年前から入れ替えの検討を始めました。

SHOEI 社製 オートバイ用ヘルメット

材料の豊富さ、造形サイズが決め手

そこで、ストラタシス社を選ばれた理由は何ですか?

菊池氏:モデル材の種類が多いこと、造形サイズが大きいこと、大手の有名メーカーであることが決め手でした。例えば、湾曲したヘルメットのシールドを造形する場合には、J35Proの回転トレイが最適です。ただし、通常は小さなパーツの造形が多いため、大きな造形サイズは基本的には必要ありません。J35Proはコンパクトなサイズですが、必要な時には大きなパーツも造形することができ、柔軟な使い方ができるのが良いです。

コンパクトな筐体と大きな造形エリア

ランニングコストの大幅な削減に成功

材料はDraftGreyを使用していますね?

菊池氏:はい、今のところは低コストのDraftGreyとVeroUltraClearの2つを使用しています。ランニングコストを大幅に下げることができましたし、仕上がりも綺麗です。Elastico ( ゴムライク樹脂) やデジタルABS(ABSライク樹脂)にも興味があり、他の材料も試していきたいと考えています。

内装固定用のブラケットを作製

実際に3Dプリンターはどのように使用していますか?

菊池氏:主試作関係の部品、部品同士の勘合や部品のイメージなどに使用しています。例えばこれはヘルメットの内装をとめるためのブラケットの試作品です。ヘルメットのクッションやスピーカーなどが付くパーツです。

3D プリンターで作ったブラケット( 透明部品)

微細な形状も多く、薄いモデルが多い

細かい凹凸が多く、薄いですね。

菊池氏:だからこそ、今後はデジタルABS(ABSライク材料)を風洞実験や走行テストに活用できないかと思い、興味を持っています。特に薄肉で、ツメ形状もあるので強度や靭性も必要になります。従来は薄肉やツメ形状は検証中に割れてしまうことが多かったです。

このサンプルではどのような点を評価しますか?

菊池氏:ブラケット自体の形状や穴の数/ 形状、スピーカー部分のサイズや形状であったり、顎バンドの逃げの形状な どあらゆるチェックポイントがあります。

最終製品( 黒色部品) との比較

形状確認以外にも用途はありますか?

菊池氏:当社はヘルメットメーカーで唯一風洞実験施設を保有しております。ベンチレーションと呼ばれる換気用のエアフロ―や空力の試験を行います。この試験では3Dプリンターで作製したパーツを用いることもあります。

風洞実験の様子

ベンチレーションの有無は装着感に大きく影響するんですね?

菊池氏:全く変わってきます。快適に被っていただきたいという想いで、換気性能には特に力を入れています。

機能試験では強度が必要な材料も必要になりますよね。

菊池氏:だからこそ、今後はデジタルABS(ABSライク材料)を風洞実験や走行テストに活用できないかと思い、興味を持っています。特に薄肉で、ツメ形状もあるので強度や靭性も必要になります。従来は薄肉やツメ形状は検証中に割れてしまうことが多かったです。

地域によって異なるヘルメットの作り

国内向けと海外向けで設計は変わりますか?

菊池氏:仕向け地によって仕様は変わります。例えば北米ではシェルが厚くて衝撃吸収ライナーが柔らかい、一方でヨーロッパではシェルが薄くて衝撃吸収ライナーが固い、日本はこの中間に位置します。ぱっと見は同じに見えますが、中身は大きく違います。

見えない部分に重要な技術が詰まっている

難しいことが無く簡単に使える

3Dプリンターでの造形のコツはありますか?

菊池氏:実は、専用のスライサーソフト”GrabCAD Print”では色の設定をするくらいしか触れていません。難しい操作がなく、オペレーターに1度教えてしまえば、その後に質問が来ることはほとんどありません。

ソフトウェアの使用感はどうですか?

菊池氏:簡単です。3 D C A DからS T L 形式に変換をしたデータを”GrabCAD Print”に挿入します。エラーがあれば自動修正機能で解決します。以前はデーターエラー時は別のソフトウェアに入れてから修正をしていたので手間が省けて助かっています。造形手順もシンプルなのでオペレーターは複数名いても問題ありません。

3D プリンターが設置されている”ZOUKEI LABO”

WaterJetの使用で作業効率が上がります

サポート除去はどうですか?

菊池氏:試作品を作ることが多いので、3Dプリンターで造形後はなるべくすぐにモデルを確認したい、というのが当社の考えです。ストラタシスのSUP710は手作業でも簡単に取れますし、WaterJetを使用することでサポート除去の手間と時間を最大限抑えることができます。これは絶対 に購入したほうがいいです。(笑)

サポート除去装置”WaterJet”

他に後処理はしていますか?

菊池氏:基本的にはサポート除去をしたら終了です。研磨などもなく、そのまま評価に回します。時々、スプレーを 使って塗装をすることはあります。

“WaterJet” の横には塗装ブース

リードタイムを半分に削減

ストラタシス J35Proを使って感じることはありますか?

菊池氏:造形品質や使いやすさなど色々ありますが、造形時間が早い、ということがとても助かります。今すぐに作りたいと思ったものでも短時間で作れます。今までの3Dプリンターと比べて半分くらいの時間で作れています。

その中で3Dプリンターの存在が必要になると考えますか?

菊池氏:必要になってくる場合が多いと思います。

今後3Dプリンターをどのように活用したいとお考えですか?

菊池氏:ゴムライク樹脂やデジタルABSの活用、そして試作品だけでなく治具用途としても活用をしていきたいと考えております。

他の材料、新しい用途で3Dプリンターを活用されましたら、是非その結果もお知らせください。

本日はありがとうございました。

菊池氏 ( 左 )と
アルテック営業の坂 ( 右 )

3Dプリンターの造形品 ( 左 )と
成形品 ( 右 )

試作品と最終製品

ワンポイント

J35Proに採用されたPolyJet方式の回転する円形トレイ。

最大3種類の異なる材料の同時使用、混ぜ合わせが可能で、デザイン検証からエンジニアリングユースまで、幅広いニーズをカバーします。プリントヘッドの余計な稼働を無くすことでより高品質なモデルの造形が可能となっております。硬質、高透明度(クリア)、ラバーライク、ABSライク、生体適合性材料など幅広い物性に対応しております。

この事例で登場した製品

Stratasys J35 Pro

【主要仕様】
積層ピッチ(Z 軸) 0.01875 ㎜
モデル材 高発色モノクロ:VeroUltraWhiteS / VeroUltraBlackS /VeroUltraClearS
低ランニングコスト: DraftGrey
ABS ライク: RGD531(Ivor) / RGD515+
* 上記2 材の混ぜ合わせ
ゴムライク: ElasticoBlack / ElasticoClear
生体適合性: VeroContactClear
サポート材 SUP710( 剥離) / WSS150( 水溶性)
電源電圧 100V , 50-60Hz , 10A , 単相
本体寸法/ 重量 (W)651㎜ ×( D)661㎜ ×( H)774 ㎜ / 98 ㎏

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