“稲妻のような速さ”の試作で、
アイオワ大学のイノベーションを加速

アイオワ大学のProtostudiosラボでは、StratasysのFDMおよびPolyJet 3Dプリンティング技術を活用し、足部変形(クラブフット)の非手術的治療用装具「アイオワブレース」の改良と迅速なプロトタイピングを実現しました。数多くの試作とテストを短期間で繰り返すことで、子どもたちがより安全で快適に使える画期的な装具の開発に成功しました。

課題:非手術的な先天性内反足治療の改善

 501(c)(3)団体Clubfoot Solutionsの共同設立者であるトーマス・クック医師は、従来の内反足矯正治療方法を大幅に改善する機会を見出しました。

 アイオワ大学公衆衛生学部の名誉教授であるクック医師は、1950年代にイグナシオ・ポンセッティ医師が考案した「アイオワブレース」というシンプルなギプス固定法の設計を改善したいと考えていました。アイオワブレースは、治療中に子どもの足を正しい位置に保持するために設計されたものです。オリジナルの静的モデルは、左右の足用の2つのプラットフォームと、軽量メッシュのブーティ、そしてそれらをつなぐ固定バーで構成されています。この装置は非常に効果的ですが、固定されたバーが子どもの移動を大きく制限し、自力での移動を妨げてしまいます。

 クック医師は、子どもたちが足を動かし、筋肉を伸ばすことができるように、可動式プラットフォームを備えた新しいアイオワブレースを再設計しました。それでいて足のプラットフォームを正しい治療位置に保持します。

 この設計コンセプトには多くのテストと改良が必要であることが分かったクック医師は、医療機器のプロトタイピングと3Dプリンティングを専門とするアイオワ大学キャンパス内のProtostudiosラボに協力を求めました。

ストラタシスの3Dプリンターで、試作・テスト・製造を加速

 「Protostudiosプロトタイピングラボは、設計とモデリングの入力からワークフローを始めました」とオペレーションディレクターのスペンサー・クール氏は語ります。「ほとんどの製造プロセスと同様に、コンポーネントは対象の製造設備で最適化できるよう、再設計または設計される必要がある」とクール氏は述べています。

 モデルはストラタシス社製 F370 (FDM方式)と高強度素材PC-ABSで3Dプリントされました。FDM方式とは、強度の高い熱可塑性樹脂を下から上へ層ごとに加熱・押出して積層していく、広く利用されている3Dプリンティング方式です。熱可塑性フィラメントを用いて、エンジニアが初期段階のプロトタイピングで素早くパーツを作成できます。

 このプロセスは、クック医師が開発初期段階で頻繁に装置の機能性をテストすることを可能にしました。「プロトタイプを約6人の子どもに試したところ、ロック機構の取り付け部にひびが入ることがすぐに分かりました」「3Dプリンターのおかげで、すぐに複数のプロトタイプを製作して患者に試し、どこが壊れるかを確認することができました。最終的に取り付けパーツを再設計し、バーの厚みをほぼ2倍にしました。」とクック医師は語ります。

 短期間でクック医師とProtostudiosチームはこの装置の18回のバージョン改良を実現しました。

 「3Dプリンターのおかげで、設計要件を迅速に満たし、より信頼性の高い製品へ一歩一歩近づけました。以前なら1バージョンごとの変更にかかっていた時間とは比べものにならない“稲妻のような”スピードです。」
—トーマス・クック 医師
Clubfoot Solutions共同設立者、
アイオワ大学公衆衛生学部・カーバー医科大学リハビリ・理学療法学部・
Renew Dental補綴歯科医 名誉教授

設計要件 改良版アイオワブレース

アイオワブレースはほぼ子供専用であるため、設計チームは以下のような複数の絶対的な要件を定義しました。

安全性と快適性
  子どもの指を挟んだり肌に刺激を与えたりする機構は不可
安全性
  着脱可能な足台にロック機構・リリースボタンを備え、バーの安全な装着・着脱および確実な保持を可能とすること
適応性
  靴サイズ000~10のすべての子供、複数長さのバーを適応可能とすることで、成長に応じ肩幅に合わせられること
手頃な価格
  量産のため射出成形可能で、Clubfoot Solutionsの理念である発展途上国の家庭にも手頃かつ入手しやすくすること
射出成形を最適化
  製造設備向けに抜き勾配、パーティングライン、アンダーカット、スルーホール等を考慮した設計
設計が最適化された「アイオワブレース」

量産に向けた射出成形と3Dプリンター

 短期間で射出成形に移行できたのは、ストラタシス社製J750 Digital Anatomyがあったからです。

 「Protostudiosの射出成形システムはMaster Unit Die(MUD)ベースを使っており、専用の金型ベースを作るのではなく比較的小さいモールドインサートの作成が可能」とクール氏は語ります。インサートは工具用鋼やアルミから切削加工できるほか、J750でDigital ABS(ABSライク材料)を使い3Dプリントすることもできます。

ストラタシス社製3Dプリンター”J750”で造形をした樹脂型

 機能テスト完了後は、同じモデルを3Dプリントして最終の射出成形パーツに合わせた色や質感を選び、外観や美的承認を得ることが可能です。また、そのパーツが金型成形可能か、設計基準を満たすかも確認できます。

Stratasysの医療向けソリューション

 先天性内反足で生まれる子どもの約80%が、医療にアクセスが限られる発展途上国に住んでいます。改良されたアイオワブレースは、世界中の家庭にとって効果的で、手ごろで、入手しやすい非手術的治療法となり、活発な子どもたちに自立や移動の自由という贈り物をもたらしています。

 「Clubfoot Solutionsとのパートナーシップは、近年で最もインパクトのあったプロジェクトのひとつです。2つのStratasys 3Dプリンターの機能が互いに完璧に補い合いました。」

クック医師の設計を、FDMとPolyJetを組み合わせて迅速かつ効率的に現実化することができました。

これまでにクック医師の非営利団体Clubfoot Solutionsは、約10万個のアイオワブレースを必要な子どもたちへ配布しています。

この事例で登場した製品

Stratasys J850 Digital Anatomy Printer

生物学・解剖学・医療用途に最適な3Dプリンター

Stratasys F370

プロフェッショナルFDM 3D プリンター

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