3Dプリンター導入事例 (株式会社ボストンクラブ 様)

2015年02月23日

高精度・ハイスピードの3Dプリンター造形で、自分だけのメガネフレームをオーダーメイド

メガネフレーム生産で全国シェアの95%を占める街・鯖江。
メガネフレームの企画・デザインを手がけるボストンクラブは、3D プリンターと3D スキャナを活用したオーダーメイド・サービスを始める。
3D プリンターはストラタシス製「Objet 30 Pro」。コンパクトでスピーディなマシンが、フレームデザインの幅を広げ、メガネ製造のプロセスを変える。

福井県鯖江市を拠点にファブレスメーカーとしてメガネフレームの企画、販売を手がけるボストンクラブ。「JAPONISM」「BCPC」「MUGUET」 「BOSTON CLUB」という4 つの自社ブランドを展開し、意匠性の高いメガネやサングラスのフレームに定評がある。なかでも「JAPONISM」ブランドで製作した竹製のフレームは、海外市場で高く評価されている。製品は東京・銀座の直営店のほか、国内外300 店舗で販売。ODM を含めると年間の生産モデルは200 点以上に及ぶ。「日本製にこだわり、地元に根ざしたものづくり」が企業理念だ。

ストラタシス「Objet30 Pro」で造形した
オーダーメイドのメガネフレーム

3D スキャナとプリンターでメガネフレームをオーダーメイド

今回、同社が新たに展開するサービスブランドは「GLASS LAB」。3D プリンターを活用して、顧客の顔の形や大きさにぴったりフィットした特注の メガネフレームを提供するというものだ。すでに2014 年11 月、鯖江市の本社にストラタシス製の3D プリンター「Objet 30 Pro」を1 台導入。本機と人の顔の形やサイズを3 次元計測できるスキャナを組み合わせ、2015 年秋にも本格的に事業をスタートさせる予定だ。機器の購入にあたっては、総額の3 分の2 を国の助成で賄うことができた。

「GLASS LAB」サービスのおおよその流れはこうなる。
まず銀座店で計測した顧客データを鯖江本社に送り、テンプルエンド、ヒンジ、ノーズパッドなど各パーツを3D プリンターで適切な樹脂材料で造形した後、本社で組み立てや研磨・塗装などの仕上げ作業を行う。つまり、3D プリンターによる造形がそのままフレーム製品になる、いわゆるダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング(以下DDM) だ。数週間の製作期間を経て完成したフレームは店頭に送られ、来客した顧客への最終的なフィッティングを経て、手渡される。

これまでの量産品開発では、地元鯖江市のメガネ製造メーカーに金型製作や組み立て加工を委託していたが、「GLASS LAB」ブランドはオーダメイド生産なので、全量を自社内で組み立てる予定だ。

ボストンクラブ代表取締役・小松原一身氏。
「3D プリンターで鯖江のメガネフレームづくりが大きく変わることを期待しています」

アスリートがつけてもズレないフレーム

メガネフレームについては、デザイン、色、材質やおおまかな大きさについて特注に対応するサービスはこれまでもあったが、一人ひとりの顔の形、大きさを精密に計測して対応するケースは全国でも珍しいといわれている。

「当社でもこれまでもスポーツ選手のオーダーに応え、手作業で顔を測り特注フレームを提供したことはありますが、3D スキャナと3D プリンターを使えば対応力が広がるし、製作期間も短縮できます。当面は、スポーツグラスをつけたまま激しい運動を行うため、フレームに高い精度でのフィット感を求める、プロアマのアスリートなどを顧客に想定しています」
というのは、ボストンクラブの小松原一身社長だ。

例えば、自転車ロードレースのプロ選手は、サングラスのフレーム重量にグラム単位でこだわり、微妙な風力抵抗も気にするといわれる。精密な3D 設計と3D 造形によるフレームデザインは、アスリートにとっては待望の技術といえる。

「2020 年の東京オリンピック、2018 年の福井国体など、私たちの周辺でも今後スポーツ需要が高まる気配があります。有名アスリートに3D プリンターのDDM で製作したフレームを装着してもらえば、当社の先進性を宣伝できるし、ブランド価値も高まる。売上げ以上に、その相乗効果に今は期待しています」(小松原氏)

試作品検証にも3D プリンター。多品種少量生産をスピードアップ

3D プリンターはオーダメイドの幅を広げるだけでなく、一般的な試作品の機能試験やデザイン検証、あるいは小ロットのパーツ製造にも活用できる。

従来は設計データを協力工場に渡してサンプルを製作してもらい、形状や機能を検討していた。デザインと設計の間では何度もやりとりが行われ、最終的なデザインモデル決定までには、早くても1 カ月はかかっていたという。

「この試作検証のプロセスを、3D プリンターによる自社造形で行えば、これまでの何倍ものスピードで回すことができます。サイクルが短くなれば、それだけより多くの製品を企画することができる。ファブレスの企画会社としての当社の特徴がより強く活かされることになります」と、小松原氏。

3D プリンターで試作品を出力することで、デザインの可能性が広がることも期待している。
「これまでは金型製作や材料加工の手間を考える あまり、デザイナーの発想が限定されてしまうということがよくありました。例えば、メタルフレームの多くは冷間プレスで製作しますが、プレス加工を前提にすると複雑な曲線はどうしても避けてしまう。3D プリンターを使えば、モックアップやパーツの製造について金型を介在せず自由に造形できるようになります。3D プリンターは、フレームデザインの製造上の制約を一挙に取り払う可能性を秘めているのです」

同社は、2015 年1 月東京で開かれた「第1 回ウェアラブルEXPO」にも出展。メガネ型のウェラブル・コンピュータが現実のものになろうとする今、鯖江のメガネフレーム業界を代表する形で、フレームデザインや材料・加工技術の優秀さを来場者に訴えた。

デスクトップ・プリンター感覚で、多様な素材が使えるのが魅力

「Objet 30 Pro」導入以前にも、同社は福井県の工業技術センターの「3D 試作センター」の光造形システムを使い、デザインの試作などに活用 してきた。

「センターの光造形機は台数が限られるため、お借りするのも順番待ちということがありましたが、3D 造形が今後フレーム製作のプロセスを変える 可能性は強く感じられました。3D モデリング設計についてもセンターで指導を受け、一定のノウハウを身につけることができました。今回自社に機械を導入することで、当社の3D プリンター活用が本格的にスタートすることになります」

ストラタシス製品のなかで、あえて「Objet 30Pro」を選んだのは、「透明、耐熱性さらにシミュレートされたポリプロピレンなど、8 つの異なる マテリアルが用意されていること。300 × 200 ×150 mm のトレイサイズはフレーム製作には十分だし、業界最高クラスのプリント解像度も私たちの用途には十分」と言う。

「コンパクトで静音性も高く、ふつうのデスクトップ・プリンター感覚で簡単に使えます。ストラタシス製品のなかでも最も売れ筋の商品というのも 納得です。更にアルテック社内にもノウハウが豊富に蓄積されていると聞いて、安心して購入に踏み切ることができました」

海外のメガネ製品展示会でも、3D プリンターで製造したものが徐々に登場しているという。「3D プリンターの有無が、企業競争の勝ち負けに つながる時代がすぐにやってきます。鯖江のメガネ産業で、3D 設計、3D 造形を手がけるところはまだ少ないのですが、当社がその先鞭をつけ、そこで得たノウハウをいずれは地元に還元できればと考えています」と、小松原社長は語っている。

お客様情報

社  名 :株式会社ボストンクラブ

所 在 地 :福井県鯖江市三六町1丁目4-31-2

創  業 :1984年8月

資 本 金 :1,000万円

事 業 内 容 :メガネデザインの企画・生産/メガネ枠の小売店への販売 メガネ枠の輸入・輸出/メガネ小売店の運営

Webサイト :http://www.bostonclub.co.jp/

「Objet 30 Pro」導入

ボストンクラブへの「Objet 30 Pro」導入にあたっては、鯖江市のメガネ資材総合商社ニッセイと、アルテックがタッグを組んだ。

ニッセイの佐藤竜一取締役(写真右)は、「デザイン企画会社が3D プリンターを導入したことで、製品加工会社でも導入機運が高まるはず。鯖江のメガネフレーム産業がグローバル規模でさらに一段の飛躍を遂げるためには、企画・デザインから製造・加工・販売に至るすべての領域において技術革新が必至」と語る。
写真左はアルテック大阪営業所の福井公亮。

ご協力ありがとうございました。

※上記コメントはお客様の個人のご意見・ご感想であり、当社の見解を示すものではありません。

この事例で登場した製品

Objet30Pro(生産終了品・後継機種あり)

小型ながら上位機種にも引けを取らない人気機種。アクリルベースの材料を使用して微細な形状もしっかり表現。樹脂型としての活用も可能!

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