3Dプリンター導入事例 (佐賀県立有田窯業大学校 様)

2014年02月08日

有田焼の新たな道具「3D プリンター」
400 年の歴史を持つ伝統技術と3D プリンティング技術の融合

佐賀県西松浦郡有田町にある「佐賀県立有田窯業大学校」では、次世代の有田焼の人材を育てるべく2014 年10 月に「CAD/CAM」の授業を新設。その一環として、アルテック株式会社よりストラタシス社製3D プリンター「Objet30 Pro」を購入し、先進的な教育環境を整備した。3D プリンターが伝統工芸品である有田焼の製造にどのような効果をもたらすのか、その可能性に迫る。

日本のみならず世界的にもその価値が認められている「有田焼」。
400 年前から受け継がれてきた伝統技術により、今なお衰えることなく陶磁器産業の中心として発展を続けている。こうした日本を代表する伝統工芸の世界においても「3D プリンター」の活用が進んでいることをご存じだろうか。

佐賀県西松浦郡有田町は、言わずと知れた有田焼の産地。ここに脈々と受け継がれてきた有田焼の伝統技術とその歴史を伝承する「佐賀県立有田窯業大学校」(以下、有田窯業大学校)がある。陶磁器産業に必要な人材育成に注力する有田窯業大学校では、近年多様化するニーズやデジタル化の波に対応できる次世代の有田焼の人材を育てるべく、2014 年10 月に「CAD/CAM」の授業を新設。その一環として、アルテック株式会社よりストラタシス社製3D プリンター「Objet30 Pro」を購入し、先進的な教育環境を整備した。

3D プリンターの機種選定を行った有田窯業大学校教務部 主査の関戸正信氏は「従来の3D プリンターでは表面精度に関してどうしても妥協せざるを得なかった。
今回の導入に際しては、陶磁器製造における原型/モックアップ製作などで3D プリンターの活用を図るため、特に表面が滑らかで仕上がりのクオリティーが高い機種を選定した」と説明。加えて、アルテックからの迅速・丁寧な商品提案やアカデミック向けの充実したサポート内容も、Objet30 Pro の購入を決定付けた大きな理由だったという。

「Objet30 Pro」で出力した急須のモックアップ。表面が滑らかで高精細であるため有田焼の原型やモックアップ作りに最適である。 「Objet30 Pro」で出力した急須のモックアップを手にする佐賀県立有田窯業大学校 教務部 主査の関戸正信氏

3D プリンター「Objet30 Pro」が有田焼の課題解決に貢献

有田焼というと「酒井田柿右衛門」に代表される伝統作家が手掛ける美術品や献上品といったイメージが強いが、量産品として多くの人々に親し まれている側面もある。歴史的に見ても有田焼は海外輸出や国内市場向けに量産が行われており、1 つの産業として早くから各製作工程において、細分化・効率化が確立されており、生地は生地屋、型は型屋、焼きは窯元、絵付けは絵付け師のように分業化されている。「他の産業であれば各工程において自動化/機械化がなされるかもしれないが、有田焼の場合は全ての工程が職人による手作業となっている。一部、絵付けを転写する技術も確立されているが、基本的には多くの人件費が掛かっている」と関戸氏。そういった面からも、本来重要であるデザイン検討・構想に手間やコストを掛けづらいというジレンマがあるという。

焼き物は、焼くと縮みや特有のへたりが発生するため、焼き上がらないと最終的なカタチを確認することができない。そのため、デザイン検証の結果、やり直しが発生した場合、再度一から試作品を作り、焼き直さなければならない……。

轆轤(ろくろ)の指導風景。有田窯業大学校ではトップレベルの技術を持つ伝統工芸士の指導を直接受けることができる

「有田焼は、デザイン確認用の試作品作りであっても通常と同じように、型製作、成形、乾燥、焼成などの工程を経るため、完成までに最低1 カ月間はかかる。そのため、いかに早い段階で顧客とデザインの合意ができるかが課題となってくる」(関戸氏)。

こうした課題解決に、3 次元CAD と3D プリンターが大きく貢献する。3 次元CAD で有田焼のデザインをモデリングすることで、コンピュータ上でレン ダリング処理を行い、CG 化してフォトリアリスティックに顧客とデザインの確認が行える。従来、手描き図面やラフスケッチなどでやりとりが行われてい たことを考えると、これだけでもデザイン確認の精度は向上するだろう。しかし、コンピュータ上のデジタルデータだけで完結できないのが焼き物ならではの難しさだ。コンピュータの画面上に表示されたデジタルデータだけでは、手に触れて初めて感じられるリアリティを追求することはできない。デザインの最終合意には現物による確認がどうしても不可欠だ。

そこで、3D プリンターの出番だ。「特に焼き物の場合は、手に取った際の感触や感覚、料理を盛り付けたときのバランスなどが重要視される。その ため、3D プリンターで実際に造形したモックアップで関係者と早期にデザインイメージのすり合わせができる点は非常に大きな意味を持つ。また、図面が読めない担当者ともスムーズにコミュニケーションすることが可能となり、発注ミスやデザイン要望の取り違いといったリスクを早期段階で回避できる。結果として、より正確なデザイン確認と製作期間の短縮が図れ、顧客と作り手の双方でWin-Win の関係が築ける」と関戸氏は説明する。

こうしたコミュニケーションツールとしての有効性の他にも、3 次元CAD と3D プリンターの組み合わせにより、デザイン提案の幅が広がったり、一度に複数のデザイン案を出力して検証できたりといった導入効果が得られるという。「3D プリンターは自分の頭で思い描いたイメージをそのまま実物として出力できるので、以前よりも確実にデザインの選択や意思決定が早くなり、すぐにブラッシュアップに取り掛かれるようになる。デザインを妥協することなく、スピーディーに磨き上げることができる」(関戸氏)。

3D プリンターが開発の新たな道具に!!有田焼の新しい可能性

近年、有田焼を取り巻く環境も大きく変化しつつあるという。「最近では、国内外のデザイナーなどから有田焼とコラボレーションした作品作りがしたいとの要望や問い合わせが多数あり、実際にSTL データが窯元へ持ち込まれるケースも増えてきている」と関戸氏は話す。

こうした新たなニーズからも分かる通り、今後ますます有田焼に求められるデザイン要求は多様化していくものと考えられる。そのような状況の中、これからの有田焼には、伝統技術や手法を守りながらも、3 次元CAD や3D プリンターという“現代の道具” ときちんと向き合い、どの工程で有効活用できるのか、どのような効果が見込めるのかを実践し、見極める力が求められていく。

「実際、3 次元CAD と3D プリンターでしか実現できない形状もあり、デザインの幅は確実に広がるものと考えられる。また、多数個取りの型製作など は精度が求められ、3 次元CAD と3D プリンターが得意とするところだ。各工程のどこの部分に3Dプリンターがフィットするのか、その有効性を見いだし、きちんと道具として活用して技術レベルを上げていくことが、次世代の有田焼に求められるスキルではないか。有田窯業大学校はこれからの人材育成を視野に、400 年の歴史を持つ有田焼の伝統技術から3D プリンターという最先端技術までを幅広く学ぶことができる最適な環境を整えていく」(関戸氏)。

今回、有田窯業大学校におけるObjet30 Pro の導入をサポートしたアルテック デジタルプリンタ事業部 デジタルプリンタ営業部 専任部長の冨田俊一氏は次のようにコメントを寄せる。

有田焼のデザインに3 次元CAD を活用することで、フォトリアリスティックに顧客とデザインの確認が行える カップの持ち手部分の多数個取りを行える型。こうした同じパーツを複製する型作りにも3D プリンターが活用できるという

「400 年の歴史を誇る有田焼の職人技と時代の最先端である3D プリンティング技術とのマッチングの場に参加できたことを大変うれしく思います。今後も3D プリンティング技術の普及に尽力し、日本の素晴らしい技術の継承に少しでも貢献できたら幸いです」。

お客様情報

社  名 :佐賀県立有田窯業大学校

所 在 地 :佐賀県西松浦郡有田町大野乙2441-1

設  立 :1985年

沿  革 :佐賀県の主要地場産業である陶磁器産業の振興を図るため、陶磁器に関する専門知識及び技術の修得により、
将来業界の後継者、技術者となって働く人材の育成を目的として開校

注  記 :現在有田窯業大学校は佐賀大学に吸収合併されており、更に同設備は佐賀県窯業技術センターへと移管されております。

ご協力ありがとうございました。

※上記コメントはお客様の個人のご意見・ご感想であり、当社の見解を示すものではありません。

この事例で登場した製品

Objet30Pro(生産終了品・後継機種あり)

小型ながら上位機種にも引けを取らない人気機種。アクリルベースの材料を使用して微細な形状もしっかり表現。樹脂型としての活用も可能!

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