3Dプリンター導入事例 (株式会社エムトピア 様)

2015年02月05日

ワイドフォーマット最新機種で大型モデルを一発造形
3Dプリンターを軸に東大阪のものづくりを変える

ナニワのものづくりを担う街・東大阪市。
この地で40 年以上にわたって、モックアップや金型の設計・製造を手がけてきたエムトピアは、いま3D プリンターによる製造プロセスの改革を進めている。2014 年12 月にはマルチマテリアルプリンターでは世界最大となるストラタシス製工業用3D プリンター「Objet 1000」を国内で初めて導入。従来は分割して組み立てる必要があった大型モデルや実物大の試作品開発に力を入れようとしている。

3D プリンターはオーダメイドの幅を広げるだけでなく、一般的な試作品の機能試験やデザイン検証、あるいは小ロットのパーツ製造にも活用できる。

1,000 × 800 × 500mm というストラタシス社製Polyjet タイプでは最大の造形サイズを誇る「Objet1000」。大型のモデルや実物大の試作品が造形可能なマルチマテリアル・ワイドフォーマット3D プリンターだ。2014 年11 月にドイツ・フランクフルトで開催された「EuroMold2014」では、アーヘン工科大学が、このプリンタですべての外観パーツを造形した「Street Scooter」と呼ばれる小型四輪車を発表。自動車産業における3Dプリンター導入の可能性を拡大するものとして大きな注目を集めた。

ストラタシス社製Polyjet タイプでは最大の造形サイズを誇る「Objet1000」

日本のものづくり産業でも3D プリンターの導入機運は熱を帯びているが、Objet1000 のようなワイドフォーマットの機種の登場を待ち望んでいた企 業がある。東大阪市に本社があるエムトピアだ。大手家電メーカーの試作検討のためのモックアップ製作から事業をスタートさせ、各種試作品や金型の設計・製造を手がけて40 年になる。現在は弱電、情報機器、工業機器、遊技機などにも顧客が広がる。

「この業界では400 点もの試作品を3 日で納入するといった、タイトなスケジュールが当たり前。そのスピードに対応するため、当社も早くから、MC加工、真空注型、光造形などの新技術を貪欲に取り入れ、当然ながら3D プリンターにも注目してきました。より大型で精密な造形をスピーディーに展開するためには、ワイドフォーマットが必須。製品としてObjet1000 が最適であるとの結論に達しました」と語るのは、林 廣守社長だ。

エムトピア・林 廣守社長。
技術潮流の変化を先読みする大胆な経営手法で定評がある。抱えるのはサンプルとして造形した 自動車エンジン部品。

大型モデルの一発造形、小型モデルの大量造形に最適

ストラタシス「Objet 1000」で出力中のスケールアップモデルの例。

当初は、ストラタシス社製「Objet500 Connex」を用いた外部造形サービスの活用を検討していた。だが、Objet500 Connex で大型モデルを製作する場合は分割して造形したのちに、接着や組み立てが不可欠だ。この点、Objet1000 なら一度での造形が可能。最初から組み上がった形で造形できるため、パーツの接着や組み上げ時の誤差が少なくなるメリットがある。また、16 μ m および30 μ m と積層ピッチがこまかいため、カーブの多いモデルでもなめらかなサーフェイスが期待できる。

「家電製品なら、電気洗濯機や冷蔵庫のドアなども一発で造形できる。自動車の大型部品にも十分対応できる。実際に、当社がObjet1000 を導入した話が伝わり、自動車業界からの引き合いも増えつつある」という。

造形可能サイズが大きいということは、サイズの小さなパーツを複数同時に造形できるということでもある。「試作品だけでなく、精度の高い治具やゲージなどを、必要なときに必要な数だけ作り出すことができる。例えば小さな部品を50 個同時に造形することもできるようになるため、短納期への対応度が高まった」

対応素材が、硬質、透明、半透明、ゴムライク樹脂など10 数種類に及ぶ中から、デジタルマテリアル機能を用いて100 パターン以上の物性を表現できる点もObjet1000 の魅力の一つだ。

「Objet1000」では、このような大型のモンキーレンチも一発で造形できる。
2015 年1 月東京で開かれた「オートモーティブワールド2015」に参考出品された。

3D プリンターを軸に地域企業がネットワークで結ばれる未来

「将来は3D プリンターがより普及し、そのサイズももっと大きくなる。東大阪をはじめとする日本のものづくりはどんどん変わるだろう」と林社長は予測する。

林社長が夢見るのは、東大阪など日本のものづくり産業の集積地に続々と3D プリンターが導入され、それらがネットワークで結ばれ、自在にコラボレーションする未来だ。

「大型プリンタでは小さなパーツの多数個取りが容易にできるが、もしそれでも間に合わないぐらいの大量受注が舞い込んできたときは、会社を超えた協業生産をすればいい。3D プリンターなら同じものが高い精度で何個でも作れる。しかもスピードが速い」
林社長がイメージするのは、3D プリンター先進国アメリカで進むDDM(ダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング)サービスビューロのような業態だ。100 台の3D プリンターを一箇所に集めて大型パーツを分割生産したり、小型パーツの量産を行う企業がすでに登場している。

日本でもこうした形の生産がいずれ始まるかもしれない。1 社で100 台という規模は先の話だとしても、地域で100 台なら今すぐにでも実現可能だ。現実的には、協業生産に伴う秘密保持契約など解決しなければならない課題はあるが、こうした大胆な発想をしていかない限り、日本の受注型ものづくり産業に未来はない、という危機感が林社長にはある。またそうした生産形態のイノベーションを可能にする力を、3D プリンターは秘めている。

東大阪の金型製造業は、全盛期に比べると10%程度までに減った。2000 年前後から顕著になった受注減の傾向はいまだ回復していない。空洞化しつつある東大阪のものづくり産業が、3D プリンターを軸に再び輝きを取り戻すことを林社長は期待しているのだ。

国内初導入により、2015 年1 月には当社主催のプレスツアーも開催、多くのメディアにも取り上げられ大きな反響をよんだ。

技術革新の変化を先読みし、ノウハウを蓄積

同社への3D プリンター導入を共にすすめた、機械商社マックスブレイン(大阪市)の西尾 晃一社長によれば、エムトピアはもともと新技術導入には大胆かつ貪欲な企業。

「MC マシンが全盛期のころは、一挙に10 数台導入し、光造形機の導入も10 年以上前と早かった。ものづくりの潮流の変化を先取りする、地域のリーダー的存在だ。今回もObjet1000 導入とほぼ同時期にFDM(熱溶解積層法)方式のストラタシス製3D プリンターFortus400mc を導入している。3D プリンター技術が今後どう変わるかわからないため、異なる方式のプリンターを導入し、その使い分けのノウハウを蓄積しておきたかったというのが理由だ。光造形機の導入のころから、3DCAD 設計の技術者養成にも積極的に取り組んでおり、そのノウハウが3D プリンター活用に生きている」と語る。
実際、中小企業が3D プリンター導入を検討する際には、3D 設計技術者の存在がネックとなることが多い。モノの導入だけでなくヒトを育て、ノウハウを蓄積しておくこともまた重要なのだ。

エムトピアはベトナムに現地法人をもっており、今後はベトナム工場への3D プリンター導入も検討している。ただマザー工場としての東大阪本社 工場の位置づけは変わらない。
「世界のものづくりが中国・アジアにシフトするなかで、日本がそのネットワークから外れるという傾向もある。いち早い先進技術の導入で、その流れを再び日本に取り戻したい。今回、3D プリンターを導入したのもその思いが強かったから。その思いを実現するためにも、ストラタシス製品にはフル稼働してもらわなければならない」と、林社長は語っている。

エムトピアへの「Objet1000」導入をチームワークで進めた、機械商社マックスブレインの西尾 晃一社長(写真左)と、アルテック・デジタルプリンタ営業部・岡部 泰三課長(写真右)。岡部は「これまで諦めていた大型モデルや1/1 サイズの試作品や治具の造形ができるようになり、ものづくりの幅が広がった。さらに小型・微細モデルの大量造形による時間短縮の効果も大きい。東大阪に蓄積されたものづくり手法に3D プリンターのメリットであるスピードがプラスされることで、地域産業の革新が進む。今後もその一助となりたい」と述べている。

お客様情報

社  名 :株式会社エムトピア

所 在 地 :大阪府東大阪市吉原2-8-17

創  業 :1970 年1 月18 日

資 本 金 :2,000万円

従 業 員 :国内120 人、海外100 人

事 業 内 容 :工業用外観模型(スタイリングモデル)、製品試作模型(ワーキングモデル)、簡易金型成型、成型品改造などの製作・販売。家電・弱電・情報機器の大手メーカーが取引の中心。年間売上約15 億円。ISO9001/14001 取得企業。

Webサイト :https://www.emtopia.com

ご協力ありがとうございました。

※上記コメントはお客様の個人のご意見・ご感想であり、当社の見解を示すものではありません。

この事例で登場した製品

Objet 1000 Plus

大型のモデルや実物大の試作品が造形可能なマルチマテリアル・ワイドフォーマット3Dプリンタです。

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